バークリーってどんな感じ?net JazzTime のTOPへ


バークリーといえば日本のジャズ界ではもっとも有名な留学先です。そこで10年前にバークリーに留学した経験のあるギターリストであり、また音楽学校の講師もしているGKさんにいろいろとお聞きしました。
(メールインタビュー)


譜面は読めなくとも、TOFEL500点以上必要。

NJLバークリー音楽大学はボストンにあるんですよね。

GK :はい。 ボストン市内にあります。 マサチューセッツ・アヴェニューとボイルストン・ストリートの交差したあたりにあります。

NJL: ここではジャズだけなのでしょうか。それともクラシックなども教えているのでしょうか。

GK:基本的にはジャズですが、クラシック的な授業も多少あります。 あまり具体的な授業は覚えていませんが。 しかし、今やロック系の生徒の方が多いようなのでジャズ学校というよりはポップス全般の大学と言う感じでしょうね。

NJL:入学するときに特別なにか資格が必要ですか。それとも無試験でいいんでしょうか。

GK: 私の時は試験というよりも学校事務員の面接とギターの先生の面接がありました。私の時は英語の先生と音楽の先生の推薦状があれば高校卒業の証明書があれば良かったのですが、今はTOEFLで500点程度とっていないと入学はできないらしいです。なんだかんだ言っても一応大学ですから英語の解らん外人相手にスローに喋ってくれるわけではないのである程度の英語力は必要とされるでしょう。 簡単に言えば日本 の大学の授業が全部英語になった感じです。

NJL:TOEFLで500点なら中級くらいですかね。留学すならそのくらいないとついて行けないというかんじでしょうか。これはしかたないですね。後は高卒資格があればいいんですね。

GK: 多分そうです。私は大学卒業後に行きましたので知らない間に一般科目の単位が取れている事になっていました。(論理学とか)

NJL:日本人が多いと聞くのですが何人くらいいましたか。

GK:詳しくは覚えていませんが、確か留学生のなかで一番多い国が日本だとか。

NJL: 事前に譜面くらい読めないと相手にもされないのでしょうか。

GK:入学時には譜面に関してはなにも言われませんでしたが、譜面が読めないとまずベーシックな授業(通称ラボ)に行かされます。アンサンブルの授業は取らせてもらえません。その後たしか年に2〜3回あるオーディションを受けて一人づつランクづけされます。譜面が読めないかぎりランクも付きません。ランクが高くなるほどとれる授業の数も多くなります。 

NJL:コースは入学してすぐに選択するのでしょうか

GK: 専攻楽器はすぐに決めないといけないと思いましたがそれ以外は自由だったと思います。

NJL: 卒業までは1年でいいんですか。

GK: いや、一応大学なので4年ですね。卒業までに必要な単位数がとれればいい。別に大学の卒業資格はいらないのであれば専門課程も選べます。大学と専門課程の違いは卒業までの単位数と一般科目(論理学や数学、歴史学など)の単位の有無だったと思います。ただしアメリカのディグリー(大卒資格)は日本では通用しないようです。また、日本で大学を卒業していればいくつかの単位がトランスファー(移項)されます。

NJL:なるほど、一般企業なら会社によってはアメリカの大学卒でも評価するところは結構あると思いますが、ミュージシャンの場合はやっぱり演奏ですからね。でも肩書きとしてバークリー留学とか書ける分音楽 学校の先生なんか悪くないんじゃないでしょうか。

GK:でも卒業して皆が楽器で生活しているわけでは無い様ですので就職に関してはちょっ と辛いかもしれません。日本の音大出た人と同じような物じゃないですかね。肩書きとしては使えると思いますけど、これだけバークリー留学の人が多いと・・・。


宿題の量は半端でない。

NJL: 授業はどういう形で行われるのでしょうか。

GK: 授業と講師によってさまざまです。

NJL: 理論などの座学と実践的なトレーニングだと思うのですが、日に何時間くらいですか

GK: 一週間単位で言いますと・・・。ギターでいえばギターの授業は個人レッスンで30分ぐらいかな? 後はアンサンブルの授業が2時間ぐらい。 それ以外はハーモニーが2時間ぐらい。 アレンジの授業が2時間ぐらい。イヤートレイニングの授業が2時間ぐらいだったと思います。後は選択の授業がやっぱり2時間ぐらいだったかな? すいません古い記憶なもので。ただ、それぞれの授業の宿題の量が半端じゃなかった事はよく覚えています。それと3ヶ月ごとにそれぞれの授業の試験があり、それを落とすともう一度って感じですね。いわゆるよくアメリカの大学は入学は楽だが卒業は大変といわれるやつですね。

NJL: 全部で授業自体は一週間で10時間くらいですね。?

GK: いや、もっと多かったと思います。当時の履修の紙が今手元にないので詳しく思い出せませんが。日本の大学と同じような時間数だったと思います。

NJL: 宿題はどのくらいの量ですか、例えば難しいソロを一週間で譜面に落とせとか?

GK:はい、そして次の授業ではあさってまでにこの曲をアレンジして来いと言われ、その次の授業ではこのバッハの曲を来週までに弾けるようにして来い・・。こんな感じが一週間続きます。あまり眠る時間がありませんでした。でも途中から手の抜ける授業と手の抜けない授業を分けるようにしましたが。

NJL:ところで、コピーなんか譜に落とせといわれても、そう言った事した事無い人にとってはすぐにできるものでもないですよね。コピーしてなかったらぶっ飛ばされるのでしょうか。(笑)確か有名になった人でスティーブ・ヴァイでしたっけその辺苦手だったとか。

GK: 先生によるんじゃないですかね。人気のある先生のプライベート・レッスンなどは授業をとるだけで大変ですから・・・先着順なので。そしたらイヤでもついていくようにしますから。あんまり出来が悪いとやはり「お前は私の授業は無理だ。」と言われます。授業を落とすと一学期分の授業料まる損です。
スティーブ・ヴァイの話は噂で聞きました。真偽の程は知りません。なにせ私より随分先輩ですから。


効果的なイヤートレーニング!

NJL:イヤートレイニングと言うのは具体的にどんなことをするんでしょうか。

GK:相対音感を身に付けます。最初はペンタトニックスケールをルートの音を聞いて自分で歌うとかやります。その後移動ドでメロディーをドレミ・・と口ずさみながら歌う練習をします。その後コードプログレッションを聞いて判別するとか。結構有効な授業だったと思います。

NJL:なるほど相対音感はジャズやるときに重要ですからね。またトレーニングによってだれでも身につけられる感覚だしね。そう言えば全員歌わせられると聞いたのですがそのことだったのでしょうか。

GK:はい、恐らく。 ドレミファソラ・・・ティ・・・ドって。シじゃなかったんだって。

NJL: 実際の授業なんですが、理論はいわゆるバークリーシステムだと思いますがそれは御決まりのテキストとかあるんでしょうか。

GK: ハーモニーの授業は多分お決まりのテキストだったと思いますが、上のレベルになれば講師の個性に合わせた授業だったとおもいます。ギターの実技などでも理論的な部分がありますが、講師によって様々ですね。ここら辺があまり知られていないので皆一律にバークリー理論だろうと思われてしまうのかもしれません。ジョン・レノンのハーモニーについての授業やプログレッシブ・ロックの理論的考察の授業もありましたし。私の師匠なんかバークリー嫌いだったのに今教えていますしね。

NJL:アメリカという国は基本的に結果重視思考なので、方法論にたいするこだわりはそれほどないのでしょうね。どの先生につくかという事はやっぱり運命の分かれ道になってしまうのかな。

GK: そうですね。引き出しは多いと思います。結局学生がどう吸収するかじゃないですか? ベーシックな部分は決まった事をやってその後で「でもこんなのもあるよ!」って感じで。

NJL:GKさんがついた先生はどんな感じでしたか

GK: 最初は適当に選んだのであまり人気のない人を選んでみたらおじいさんでした。でもフォービートのベースラインの弾き方とか色々教えてもらいました。その後バークリーの外で個人レッスンを別の人から習いました。 その人が私の一番の師匠です。(今はバークリーで教えています。)

NJL:なるほど、結局さらにバークリーとは別に個人的なレッスンも受けていたんですね。それも滞在中にしかできないことですからね。かなり濃い留学生活だったようですね。


うまいやつだなと思って見たらジョンスコだった!。

NJL: 日本にもジャズの学校がありますが日本と大きく違う点ってなんでしょうか。

GK: やっぱり刺激が多いと思います。 同じクラスにジョー・ザヴィヌルの息子がいたりとか、ジミー・ギャリソンの息子(今では結構有名になっています。)とかいたり。毎日校内のカフェテリアで自主コンサートも開かれていますし、アンサンブル・ルームを一日中借りて楽器もっているやつそこらへんから呼んで来てジャムやっているやつなんかもいますし。

NJL:へー、ジミー・ギャリソンやジョー・ザヴィヌルの息子さんたちもね。アメリカでも2世の時代になるのでしょうか。(笑)

GK:ジミー・ギャリソンの息子のマット・ギャリソンはベースがムチャクチャうまかったですよ。でもオヤジと違って電気ベースですけど。今日本でもマット・ギャリソンモデルって出ているぐらい活躍してます。 よく「タバコくれ!」てめぐんでやったな〜。

NJL: 笑

GK: 私の知人の話ですが、やけにとなりの部屋で練習してるやつがうまいなと思ってみてみたらジョン・スコフィールドとエミリー・レムラー(故人)とアバークロンビーがリハをやっていたと言ってました。

NJL:うーん、確かに真近にそういう人がリハしてるだけでも刺激的ですね。

NJL:ところで、学生はアンサンブルルームや練習室を自由(無料)につかえるのでしょうか。夜中の2時まで使えると聞いたことありますが。

GK:その通りです。 アンサンブルルームもいっぱいあるし、ピアノやサックス用の練習室も一杯ありました。受け付けに書き込めば深夜2時まで使い放題でした。(早いもの勝ち)連日ピアノルームに深夜迄こもっている人よく見ました。「おまえ住んでるんだろ?」って。

NJL:卒業するときに試験があるんでしょうか。それともコースを終了するだけというビジネススクールのような感じなのでしょうか。

GK: 卒業製作みたいな物をやっている人もいましたが、単位をとっていればいいんじゃないでしょうか。普通の大学ですよ。

NJL:GKさんは授業料、滞在日、旅費その他でどのくらい使いましたか。

GK: いやー今の授業料は昔の比ではないらしいですから参考にはならないと思います。5〜600万では足りないのではないでしょうか?基本的に学生ビザでは働けませんし。

NJL:まあ、私立大学に行くと思えばもっとかかっても当然でしょうね。生活費は安く切り詰めようとすればいろいろできるでしょうから。


イエロー・キャブみたいになっている女の子も....

NJL: 何かこれだけは言っておきたいことありますか。

GK:よっぽど勉強する覚悟で行かないといっぱいワナも待っていますから。ヤク漬けになってるだけの人もいましたし、イエロー・キャブみたいになっている女の子もいましたし。同じ日本人をだましてお金を取ろうとする日本人もいました。
 真面目にやっていればそれなりの友人もできますし、そうでなければやはり遊び歩くだけの友人もできます。日本人だけでかたまっている人達も多かったです。せっかくアメリカに行くのだからアメリカ人とコミュニケーションを一杯とって学業に専念したほうが良いと思います。異国の地で寂しいのはわかるけど。

NJL:なるほど、つまり一般的に海外留学者がハマル罠は当然バークリーも例外ではないということですね。もちろんジャズや音楽を心指す人たちが行くわけですから、比率はすくないんでしょうが。しかし日本人でかたまるのはつまらないですね。

NJL: バークリーの前でリアルブック(ポケット版)を売ってると聞いたんですが、ご存知ですか。

GK:よく犬を連れたホームレスのおじさんが売っていましたけど、今はどうなんでしょうね。でもリアルブックも嘘多いですよね。

NJL:それでも日本の某スタンダード集に比べるとずいぶんいいように思います。リアルをはじめて某ジャズスクールで見たとき驚きましたね。ところで、バークリーで何かカルチャーショックというような事ありませんでしたか?

GK: 私にとってはバークリーに来る人は志し高い人ばかりだろうな〜と思っていたのがそうでもない人がいるのにびっくりしました。「楽器は何?」「ジャズピアノ。」「へ〜誰好きなの?」「知らない。」「へ?」「いいの! これから勉強するの!」とか言っている日本人の女の子とか い まして。それがカルチャー・ショックでした。ま小さい頃にピアノやっていて少し英語ができればはいれますからね。でもそういう子は途中で男見つけていなくなりますけど。

NJL: あらあら(笑)、ジャズが好きで何とか時間作って勉強している人からみたら「なめるな!」と一言言いたいかも知れませんね。(笑)

GK: 出席がきびしいと言うのも驚きました。アンサンブルの授業を一度寝坊していったら お前はもうこの授業出なくていいから。」と言われてその授業の単位落としました。 

NJL: おう、みのもんたの貧乏脱出大作戦に出てくる師匠ですね。「やる気がねえならもう来るな!」っていうやつですね。(なんかいいなあ〜)
 
GK:だけど前に言ったように納めた授業料まる損ですよ。でもその方がやる気がでますけどね。アンサンブルの授業は特に厳しいんです。「お前が仕事をもらった時に無断で休んでもいいのか?」「休むならトラ(代役)をたてろ!」とプロとしての姿勢を教えられました。

NJL:やっぱり、みのもんたですね。>プロ根性(笑)プロでなくとも、ライブハウスにブッキングしたら、当然のことですけど。


面白い事がお金がかからず....

NJL:途中であきらめて帰ってしまった人とかやっぱり
    いましたか。

GK:はあ〜実は私もちゃんと卒業したわけではないですしね。卒業したからと言ってなんかなるわけでもないですし。卒業してなくてもバークリー卒ってなっている人も多いですし。卒業自体は関係ないのではないでしょうか。お金かかりますし。 何か得るものがあればいいのでは良いと思います。

NJL: 勉強以外で面白いこと何かありましたか。

GK: ルーム・メイト(アメリカ人)とよく悩みなんかを話ました。それとアパートの管理人が日本のアニメオタクでよくアニメを見せてもらいました。あとは色んな所でフリーコンサートがあり、サンボーンとかボストンポップスとかTAKE6とか見に行きました。ライブハウスも安くてロック系だと2ドルぐらいジャズ系だと5ドルぐらいのチャージで観られます。メセニーがお忍びで演奏したりとか。面白い事を探せば一杯ありましたけど何もしなければ何もない国なんですね。あそこは。

NJL:こちらがアクティブであればいくらでも受け口はあるという感じでしょうか。反対に受身でいればだれも干渉しない。どっちをとるかは自分の判断ですね。

GK:そう言う所私好きでした。だから学校以外でもバンド作ったりとか交友関係をどんどん広げていくと面白い事がお金がかからず見つけられました。 人によっては賛否両論ありますが、私は大変楽しめました。

NJL:長いことインタビューどうもありがとうございました。m(_ _)m


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