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アドリブ出来ない病の処方箋 (1) 初心者編!

  ジャズをやっていて最大の課題はアドリブであるわけです。これはどなたも疑いないと思います。ジャズをはじめたばかりの初心者における最大の課題は「アドリブ」が出来るようになりたいということではないでしょうか。また、すでにアドリブが出来るシニアプレーヤーでも自分のアドリブに満足していないという方は案外いるのではないでしょうか。今回はそうしたアドリブが出来るために日ごろから考えている「どうしたらいいのか」「どんなトレーニングが効果的か」を症状別に克服すべく処方箋を用意しました。
 
症状1:とにかく何をやったらいいのか頭が真っ白になる。

 この症状があらわれる方は主にクラシックや吹奏樂出身の方でとにかく楽譜を見ないと演奏できないという方に多いようです。

 処方箋1:書き譜を暗譜する。

 書き譜というのはアドリブ演奏を採譜されたものを意味します。まずはそう言った譜面(コピー譜と呼ぶ)を入手してそれを暗譜できるまで徹底的に覚えます。そして譜面を見ないで演奏します。ただし、今、曲のどこをやっているかを把握するためコード進行、またはコード進行とテーマのみ書かれているリードシートは見ながらでかまいません。

 処方箋2:マイナスワンで書き譜を演奏する

 さて、こうして書き譜を暗譜したらマイナスワンなどをつかって演奏してみます。このときリードシートまたはコード進行を見ながら覚えた書き譜を演奏します。そして、このときオリジナルの演奏を耳で聞いて、フレーズのニュアンスなど同じように表現できるように練習します。

 処方箋3:別の曲に覚えた書き譜を当てはめてみる。

 ようやくこれで、アドリブという白紙の空間に覚えた書き譜を当てはめるという作業ができるようになりました。次に挑戦するのはその覚えた書き譜を似たような別の曲に当てはめてみましょう。曲のキーやコード進行が同じならそのままで、もし覚えた曲がE♭のキーで別の曲がFのキーなら書き譜を転調し、また暗譜するまで覚えます。別の曲のテーマをとってから、書き譜を演奏します。ここで初めて曲で覚えたフレーズを別の曲で演奏しました。実はこれはもうアドリブ演奏の始まりなんです。ただし、曲の途中で転調したりする場合はその度に転調させます。

 処方箋4:暗譜した書き譜を少し変えて見る

 こんどは暗譜した書き譜の一部を適当に少し変えてみましょう。とにかく覚えたフレーズを適当に真っ白な空間に投げ出す練習が大事です。覚えているフレースとちょっと違っていてもかまいません。むしろ毎回少しづつ違っているくらいの方がいいかもしれません。またアドリブ演奏と言っていますがジャズプレーヤはその場ですべてのフレーズを何もないところから創造しているわけではありません。フレーズやリックといった細かい単位での音の並びを身に着けています。それを少しづつ出しているといってもいいと思います。プレーヤによって違いますが多い人で約90%、少ない人で30%はあらかじめ覚えているフレーズを組み立ててソロを構成しているという統計(笑)もあります。



症状2:今どこやってんだかわからなくなってしまう。

 これを「迷子」または「ロスト」と言ったりします。小節を追っかけているのですが、つい1小節見失うとその後もとに復帰できない症状を言います。実際ベテラン、プロでも全くなしということはないでしょう。

 処方箋5:アドリブする曲の構成をしっかりと覚えることです。

 大事なことは一旦迷子になっても必要なときには戻れるようにするという技を覚えることです。
 まずは細かく毎回小節を追おうとせず、大きく自分が今どの辺に入るかを認識するようにします。
  そのためにまずその曲の構成を覚えておきます。例えばスタンダードでよくあるABABなのかAABAなのかですね。AABAの場合の例をとって説明しますが、自分が今AにいるのかB(転調している場合が多いのでのでわりとわかりやすい)にいるのかを認識します。次ぎにAは1番はじめのAにいるのか2番目のAにいるのか、最後のAにいるのかを認識します。はじめAにいるときは大概最後の1小節は次のAの頭のコードに解決するための2−5になっている場合が多いです。また、2番目のAにいるときは最後の1小節はBに転調するためにBの頭のコードに解決するための2−5になっている場合もあります。この違いを覚えておくとわかりやすいです。
 次ぎにAかBかわかったらこれらは大概それぞれ8小節で構成されていて、さらに前半の4小節と後半の4小節に分けられる場合が多いです。それで、前半の4小節にいるのか後半の4小節にいるのかを認識します。これだけ認識できると演奏上問題になることはあまりないと言ってもいいでしょう。
 またこのようなやり方になれていくとテーマやコード進行を暗記するときにも約にたちます。

 以上のことからアドリブの時に小節のカウントを毎回やる必要はないと思います。もしカウントするとしても4小節毎にカウントすれば十分です。つまり4、8、4、8でBに行ってまた4、8、そしてAにもどって4、8といった感じです。常に大きな流れを把握するようにします。

 処方箋6:とにかく良くバックを聞く

 そして何より大切なことはバックの演奏を良く聞く癖をつけることです。このサイトにあるようなマイナスワンを楽譜やコード進行を見ながら「今どこか」を意識して何回も聞くことです。あるときはベースラインに注目し、またピアノのコンピング(ガッカーと言うやつ)に注目します。

EX-1)AABAの曲

I Hear A Rhapsody

(A)
|C-|F- Bb7|Eb |Db7 C7|
|F-7b5|Bb7#9|Eb |Dm7b5 G7#9|
←この小節は次のAのC−に解決する2-5です。
(A)
|C-|F- Bb7|Eb |Db7 C7|
|F-7b5|Bb7#9|Eb |A-7b5 D7b9|
←この小節は次のBのG−に解決する2-5です。
(B)
|G-|A-7b5 D7b9|G- |C- F7|
|Bb|F-|Ab7|G7#9|
(A)
|C-|F- Bb7|Eb |Db7 C7|
|F-7b5|Bb7#9|Eb |(Dm7b5 G7#9)|



EX-2)ABABの曲

Beautiful Love 

(A)
Eφ |A7#9|D− |D− |    前半
G− |C7 |F  |Eφ A7♭9| 後半
(B)
D− |G− |B♭7|A7#9|    前半   
D− |B♭7|Eφ |A7#9|    後半
(A)
Eφ |A7#9|D− |D− |
G− |C7 |F  |Eφ A7♭9|
(B)
D− |G− |B♭7|A7#9|
D− |B♭7 A7#9|D−|D−|


(余談)
 ジョーパスが語った話です。あるとき、ジョーパスが曲の途中でロストしてしまい他のプレーヤに「今どこやってるんだい?」と聞いたそうです、そしたらそのプレーヤーもわからなくて、そのプレーヤーがまた別のプレーヤーに聞いて、ところが別のプレーヤもわからないので、その別のプレーヤーが最後に残ったドラマーに聞いたそうです。すると、そのドラマーがジョーパスに「今どこやってるんですか?」と聞いたという話があったそうです。



症状3:曲の途中での転調したキーがわからない。

 クラシックや吹奏楽では曲の途中で転調する場合、新たなトーン記号やヘ音記号が出てきて転調したことを確実に指示します。ところがジャズで使ってるいわいるリードシートには曲全体のキーがわかる調の指示はついていますが途中の転調はメロディーから想像するかコード進行を見て理解しなければなりません。

 処方箋7:曲のキーをコードで見分ける方法

 例をとってみましょう。EX-3のAll The Things You Areです。コード進行しか書いてありませんがこれでまず曲のキーがなんであるか調べてみます。一番最後の小節をまず見ます。36小節目ですが、これは頭のマイナーコードに解決する2−5になっています。2−5ははずして、そこで一つ前の35小節目を見てください。ここはA♭のメジャーコードです。これでこの曲は「A♭メジャー」であることがわかります。良く一番初めの小節に書いてあるコードを見てそのコードがトニックだと思ってしまう方がいますが、この曲やジャストフレンズのように必ずしもそうではない場合も多いので、曲の最後の方を見た方が確実です。


 処方箋8:曲の途中で転調したキーは2−5の終着点に注目

 さて、こんどは曲の途中の転調したところのキーの見分け方です。1〜5小節を見てください。この中に2小節目から4小節目までは2−5−1のルート変化になっていることが良くわかると思います。4小節目はA♭です。つまり2−5でA♭に解決する形になっています。また、1小節目のF−も5小節目のD♭もA♭メジャーキーのダイアトニックコード注)になります。つまり1〜5小節はA♭メジャーであることがわかります。
 6小節〜8小節はキーCの2−5です。つまりキーはCです。9小節目から13小節目は1〜5と同じような並び方でキーがE♭になっているだけです。
同様に14〜20はキーがG、21〜23はキーがE、24〜35はA♭(24はF−に解決するオルタードドミナント7、また30、31、32は34のB−に解決する半音進行)ということになります。

EX-3)コード進行での転調の見分け方

All The Things You Are

 1     2      3     4 
|F− |B♭− |E♭7 |A♭ |

 5     6      7    8 
|D♭ |D− G7|C  |C |

 9     10    11    12
|C− |F− |B♭7 |E♭Δ |

 13    14     15   16 
|A♭ |A− D7|G |G E7#9|

 17    18    19   20
|A− |D7 |G  |G |

 21      22    23    24
|F#− |B7 |EΔ |C7#9|

 25    26     27     28
|F− |B♭−|E♭7 |A♭ |

  29    30    31   32 
|D♭ |D♭−|C−|B−|

  33      34   35     36
|B♭− |E♭7|A♭ |Gφ C7♭9|


 処方箋9:すべてのキーで2−5−1(ツーファイブワン)のルートの動きは暗記する。

とにかくこのようにアナライズするためには日常的に12のキーで2−5−1(II-V-I)を暗記しておくのがベストです。そのためにはこちらの特集をじっくりと聞きながら眺めるのがよろしいかと思います。

注)A♭メジャーキーのダイアトニックコードは A♭、B♭-、 C-、 D♭、E♭7、F-、G-7♭5です。


症状4:キーのスケールで演奏してるのに合わないことがある。

 処方箋10:キーのトニックコードでは4度を強調しないまたはアボイドする。

 キーを認識してそのキーのスケールでアドリブ演奏する場合、メジャーのトニックのところでは4度(アボイドノート)は使わない方が無難です。

EX4

 1   2    3   4    5
D− |G7 | C | C | F |

この例では全体として2−5−1ー4になっていてキーはCですが次のように演奏するといいでしょう。

1〜2 Cメジャースケール
3〜4 Cメジャーズケール(Fを強調しないまたはアボイドする)
5   Cメジャースケール 





今後の症状別処方箋の予定---------------

コードがいっぱいならんでいて目障りでしょうがない。

どうしてもフレーズがジャズっぽくならない

ペンタトニックスケールのソロしか頭に浮かばない。

コード進行が暗記できません。

アベラブルノートスケールをどうやってフレーズにするのかわからない。

耳コピができない。

理論と実践が結びつかない。


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