出身ジャンル別ジャズの練習法?(1)

 ジャズをやろうと考えている方ではじめて音楽を演奏する方はおそらく少数派ではないでしょうか。何かやっていた方がほとんどだと思います。ところがジャズでは一般に音楽を演奏するという事に対して、独自の世界があるため戸惑っている方も多いかと思います。出身ジャンル別にジャズをやろうとしている人が悩んでいると思われることに対して、助けになればと思います。

今回はクラシック、吹奏楽出身者です。!

1.楽譜なしの世界に突入する

 主にジャズで使われる楽器がトランペット、トロンボーンなどの金管、サックス、フルートなどの木管、ピアノ、コントラバスなど多くの楽器が共通なので、出身者が多いのではないでしょうか。いままでほぼ100%楽譜が自分の前においてあり、指揮者の指示で演奏してきたわけです。練習はまず楽譜を追ってそのとおりの演奏をすることからはじめていたと思います。そして指揮者から楽譜では読みきれない細かい表現などの支持があり、それを忠実にこなすことが目的であったはずです。ところがジャズではまずあまり楽譜が役に立ちません。ジャズで使う楽譜は「リードシート」と呼ばれてますがメロディー(テーマ)とコードネームが書かれているだけです。それを見ながら、テーマ、アドリブ(即興演奏、Improvization)を行うわけです。しかもフロント(トランペットやサックス)のパートの人はそのリードシートも見ない人が多く、テーマの演奏もリードシートに書いてある譜とちょっと違うし、書いてない音も沢山出しています。さーて困りましたね。どうしたらこんな風に出来るのでしょうか。才能がないとだめ?...いいえ決してそんなことはありません。アドリブ演奏を出来る才能はみんな持っています。実はみんな裏できっちりトレーニングを積みその結果としてアドリブ演奏をしているのです。

2.聞いて学ぶ音楽

 では普段どんな練習をすれば良いのでしょうか、まずは耳から音を拾う訓練が必要なのです。CDを聞いて音を1音1音探して行きます。そしてあるところまでフレーズとして覚えてしまいましょう。それと同じ様に自分で演奏します。これを耳コピーと言っていますが、昔はコピーと言えばこの耳コピーのことを指していました。最近コピー譜(あらかじめ採譜されている譜面)を見ながら覚えることをコピーと呼んでいる人もいるようですが、はっきり言いますがそのような練習によってはあまりアドリブが身に付きません。さらに元の曲を聴かずにコピー譜だけを見て練習するのは一見早く覚えられそうですがはっきり言って最悪の方法です。もともと楽譜を読むのが得意な人が多いのでその様な方法に流れがちですが、実は頭の中にジャズで演奏される音のイメージを持つことができないので、役にたたないのです。その理由ですが、吹奏楽やクラシックの時も指揮者や先生の指示で楽譜にない細かい表現を身に着けたと思いますがジャズにおいてもコピー譜からは読み取れない「表現」が山ほどあるのです。これを「ジャズの表現」と言っても良いかも知れません。もちろんプレーヤーによって違いますが、ジャズ共通の何かが必ずあります。よく、自分のアドリブがジャズっぽくなくて困ってると言う人がいますがこれがないのです。ジャズでは指揮者や先生がいません。その代わりCDの中に指揮者や先生が居るわけです。そしてそれを音楽として伝えてくれるのです。それではオムニブックのようなコピー譜はなんのために売ってるのでしょうか。実は以前、米国の楽譜やマイナスワンを仕入れている会社の社長さんと話したのですが「耳コピーの添削用」として使うのが米国などでも本来の役割ということです。これは先生についていないで独学で勉強している人が自分で拾ったフレーズが本当に正しいのかどうか確認するために役にたちます。あくまで耳コピーした後の添削です。

声)しかし、スピードが速くて聞き取れない...

 まずはスタンダードのテーマから拾ってみましょう。そもそもテーマの演奏からジャズプレーヤはジャズフレーバーたっぷりに演奏します。あるいはフェイクしたりして。このテーマ取りも大変勉強になります。さて、アドリブの細かい譜が出てきました。何回聞いても取れません。基本的にはとりたい音のところでぱっとCDをPAUSEにします。そしてその音が残響として頭の中にあるうちに同じ音をすぐに出してみます。それを一つ一つの音を拾っていきます。

声)それでもアドリブは早くて聞き取れない....

 そこで登場するのがこの機械です。AKAI  U400これでスピードだけ2/3、1/2に落として再生できるようになります。さらに一音一音ステップで聞きとることが出来ます。昔はテープのスピードを落としていたので音程も下がってしまいましたが便利になりました。ところがこの製品はすでに現在生産されていないそうです。(ガクッ)そこで代わりにこの機械この機械あたりも使えそうです。またPCソフトでも出てるようです。

声)コピー譜を見ながらCDを聞くのはだめですか?

 回答を見ながら、問題を見るのと同じですね。受験の経験のある方ならお分かりになると思います。苦労して聞き取るというプロセスが大事なのです。

さらに欲を言うと...

 耳コピーも楽譜に一旦落としている方も多いかと思います。これは主に習っている先生が添削しやすくするためには都合がよいのですが、そのコピー譜を見ながら練習すると、買ってきたコピー譜を見ながら練習するやり方に近くなってしまいます。多くの米国のプロミュージシャンはその場で暗譜する「空コピー(仮名)」を推奨しています。

声)せっかく苦労してコピーしたのに忘れてしまったらもったいないのでは。

 私の経験では例えば、一回あるところまでコピーします。そしてそのフレーズが空で出来るようになるまで何回か練習します。そして一旦覚えるのですが、次の日そのコピーしたところから先をやろうと思って向かって見ると、昨日コピーしたフレーズをすっかり忘れています。そこで昨日のところをもう一度聞いて再コピーしてみます。すると、昨日2時間掛けて覚えたフレーズが15分くらいでコピーできるのです。そして昨日のコピーの内容に若干違うところがわかります。こうしてさらに次の日もコピーに向かいます。こんどは5分で思い出し、最後に完全に暗譜します。そのうちコピーする時間も徐々に早くなってきます。このようにして覚えたフレーズは自分の身に付くのでアドリブのときに意識的にも無意識にも使うことが出来るのです。大事なことはフレーズを音としてのイメージで覚え、それを指使いに直結することなのです。

耳コピーしている現場(ムービー、ただいま準備中)

超クラシックな方は実は...

 因みに、正規の音楽学校、音大などでまじめに勉強されていた方は実はジャズのアドリブもすぐにうまくなる方がいます。カリキュラムとして聴音などがあり、耳コピが苦にならないようですね。うらやましいですね....

3.ところでピアニストはさらに

 コードとコードの理論、少なくともコードフォームなど本で勉強しなければならないことがあります。もちろん、フロントも知っておいた方がいいですがピアニストの場合知らないとバンドでは使い物になりません。(きっぱり)やることが沢山あって大変ですががんばってください。逆に言うと使い物になるピアニストは少ないので出来る人はひっぱりだこです。当ページのなんちゃってジャズピアノを見て理解できなかったらやばいですよ。(半分脅し)

ピアニストにはまだ言いたいことがある。!

 クラシックで一人で弾いてきた方が多いのか、マイペースな方が多いのか、どうもジャズをやるようになって初めて、バンド、アンサンブルというのを経験するためか、今ひとつバンドで音楽をやるということ、ピアノの立場など非常に基本的なところをよく理解していない、いや、むしろ戸惑っているのかも知れませんが、「あなたを中心に音楽が回っているわけではない!」と言ったらもちろん言い過ぎでしょうか。バンドの練習のとき、スタジオに一番遅く来るのもピアニストが断トツ、そもそも遅刻してスタジオに入ってくることに罪悪感がないのでしょうか。もちろん、早く来てもベースはチューニング、ドラムはセッティングと時間をとられます。その間にウオーミングアップくらいするくらいの気迫を見せてほしい。とりあえず、スタジオの予約時間より1分でも早く到着できるピアニストはジャズをやっていく才能があるかも知れません。いわいるカルテットの場合、ピアノは一応リズム隊の一員としてベースやドラムと協力していいバッキングを作らなければなりません。それがまずは第一の使命なのです。なんの下地もなく適当にフロントの演奏の後ろでフロントのソロなんか上の空でコードをコンピングして、ひたすら自分のソロの番が来るのを待っているなんていうのはとんでもない考え違いです。

うまいピアニストはバッキングが違う

 ピアニスト志願者の方にかなり厳しいことを言ってしまいましたが、少し言い過ぎたかなと反省しております。(_ _)ペコリ あくまで個人的な経験を元に言っているので決して一般論ではありません。もちろん、あたりまえですが上記のようなことを克服してピアニストとして立派に活動してる方も沢山いるのです。そうしたナイスピアニストに共通することを敢えてあげると、まずバッキングがうまいのです。そしてコンピングのタイミングやボイシングなど良く研究しているのです。つまりピアノのソロをコピーするだけでなく、CDで演奏されている好きなプレーヤーのバッキングスタイルもコピーしているのです。あるいは理論書なども参考にしてるかも知れません。そして、何よりも驚くことは彼らはジャズが好きでジャズに詳しいのです。ピアニストだけでなくサックス、トランペット、ベース、ドラムなどのミュージシャンにも詳しいのです。つまりジャズの演奏全体を捉えて、その中でピアノの役割とカッコ良さを知っているのです。ナイスピアニストなら以下のプレーヤーの演奏を一度も聞いたことがないという人はいないはずです。

 バド・パウエル、レッド・ガーランド、ウイントン・ケリー、ビル・エバンス、オスカー・ピーターソン、ソニー・クラーク、マッコイ・タイナー、ハービー・ハンコック、マイルス・デイビス、クリフォード・ブラウン、チャーリー・パーカー、アートペッパー、キャノンボール・アダレイ、ジャッキー・マクリーン、ソニー・ロリンズ、デクスター・ゴードン、ジョン・コルトレーン、ウエイン・ショーター、ケニー・クラーク、マックス・ローチ、ジミー・コブ、フィーリー・ジョー・ジョーンズ、アート・ブレイキー、エルビン・ジョーンズ、トニー・ウイリアムス、ポール・チェンバース、サム・ジョーンズ、スコット・ラファエロ、ジミー・ギャリソン、ロン・カーター

もし、名前も知らない人がいたら
バッハ、モーツワルト、ベートンベン、ショパン、チャイコフスキー、ワーグナー、ストラビンスキーのどれかを知らないクラシック演奏者と同じレベルだと思ってください。

これはピアニストにだけの課題ではないですね。^^

声)私はピアノトリオなのでバッキングは気にしません。フロントも関係ないわ。

 おう、良くぞ言ってくれましたね。ピアノトリオはピアニストがテーマ、アドリブ、フォーバースとすべてを自分で行います。アドリブソロも単純にフォービートだけでなく、はじめはテーマのツービートを引きづりながら、そして4ビートさらには倍テンになって、盛り上げていく、これをあうんの呼吸でドラム、ベースと一体になっていくのです。ピアニスト自身の高い音楽性と経験が要求されて来ます。もちろん自分の好きなことだけを追い求めるのも大切です。ご健闘をお祈りしています。因みに某ジャズスクールのアンサンブルコースでは初心者のピアニストはカルテットから入ります。

今回はこれで終わりますが、次回また別のジャンル出身者向けの記事を予定しております。



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