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最新記事 世界初、アメセル5桁匹敵テナー製造開始
中国製廉価SAXをMarkVI並にグレードアップ! byアローン
プロのサックスプレーヤの多くは現在セルマーMarkVIを使用しています。やはりこの機種がアクション、音色、試奏感、アーティキュレーションの作りやすさなどともにジャズという演奏スタイルにあっているからというのはいまさら説明する必要もないことでしょう。
ところがこのモデルは製造が終了してからすでに30年以上経過しており、現在ではビンテージで市場に出ているものから選ぶという以外に入手方法はありません。また価格は現在のセルマーのメインラインであるシリーズ2、シリーズ3の2倍〜5倍くらいであり、しかも仮に予算があったとしてもいい物がすぐにあるわけではなく、また、こういったビンテージ楽器を探したり、選んだりするには知識も必要になります。さらに言うとMark
VIの中でもアメリカでノックダウン生産されたいわゆる「アメセル」が圧倒的に人気があり、価格も年々上がっていくばかりです。このような状況でMark
VIを使って見たくともあきらめている方は多いと思います。
セルマーはリファレンス54でジャズにリベンジ
こうした中でセルマーは3年前にMarkVIの復刻版と言えるようなリファレンス54を発売しました。この楽器は確かにMarkVIを普段吹いてる人が吹いても全く違和感なくブローでき、また音色も近いと思います。ただ、価格がそれなりに高いので、この予算があればビンテージのアメセルは無理でも仏セルのMarkVIならなんとか買えそうだし、MarkVIIならアメセルでもなんとかなってしまいそうです。リファレンス54は一応仏セルなのでそう言う風に比較されてしまうと思います。しかし,現行の楽器の中ではMarkVIにもっとも近い楽器であることは間違えないと思います。
侮れない、中国製廉価サックス
そこで少ない予算でなんとかMarkVI系の音が出せないかという試が今回のテーマで、中国製廉価サックスを低予算で簡単に改造してなんとかMARK
VIに近い楽器に出来ないかというのが今回の一見無謀な計画です。
今回試奏した中国製のテナーサックスはMAVISのMTS-700というもので、販売価格が49800円でハードケース、マウスピースその他付属品一式がついているというものです。この値段を聞いたら一昔前ならおもちゃのような楽器を想像してしまうかも知れませんが、ところがなんと、この楽器はメカニズムはほぼ完全にセルマーシリーズ2のコピーなのです。写真をみていただければわかると思いますが同見てもシリーズ2です。しかもサムフックとサムレストはメタル製です。またリゾネーターもメタルレゾという仕様です。構造的にはほぼ国産の上位機種並の仕様です。ただ残念なことに私が入手したこの楽器は調整が悪く、キーの関連に問題があったり、ピッチも大分ずれていました。この辺は自分でキー高さを直しましたが、リペアー専門のお店に出せばきちっとしてくれるでしょう。音色的には一応セルマー系の音色は出てくれます。ただ多少パワー不足を感じます。しかし価格の割には結構使えると思います。
余談:セルマー以外のメーカーの現行サックスについてですが基本的にメカニズムやキーアクションなどはシリーズ2を踏襲していると言っていいでしょう。実際にシリーズ2のアクションやメカニズムはサックスとして一つの完成型であると言っていいように思います。特にアジア製のサックスの多くは近年シリーズ2をフルコピーして入門用に製造しています。なんだかんだ言ってもやっぱりセルマーシリーズ2のコピーなら説得力がある(ジャズ以外でも)ということでしょう。
そこで考えたことは....このサックスにリファレンス54のネックをつけてみたら...
と思っていたのですが、たまたまリファレンス54のネックを入手することが出来ました。写真にあるようなアンティークブラッシュドサテン仕上げが特徴的ですが、実はこのネックにはそれよりも重要な意味があるのです。それはこのネックのカーブ形状です。これが現行のシリーズ2や2の模造品に比べ全く違うのです。
さらにネック形状を比較した写真がありますが、一番上のリファレンス54のネックは初期のMarkVI(上から2番目)の形状に非常に似ています。これに対してMTS-700のネックは一番下にあるようにカーブが大きく、その分マウスピース側の先端から本体までの距離が短くなります。これは現行のシリーズ2も同じです。
それで、私の考えではこのカーブの違いは音響特性的に重要な役割をすると考えていまして、サックスにおいては倍音の特性などを大きく左右してるかも知れないと考えています。つまりこのカーブの差が楽器のキャラクターを大きく左右していると思っています。
さて、いよいよ中国製廉価サックスMTS-700にリファレンス54のネックを取り付けます。この写真にあるように、リファレンス54のネックは根元から急カーブしているので、なんとネックのオクターブキーを動かすレバーがネックについているリブに当たってしまいます。レバーの上部をカットしてしまえばいいのですがとりあえず、ビニールチューブをはずして、ぎりぎりまでネックの回転角をずらして対応することにしました。
ネックのジョイントは幸いこのMTS-700の内径より小さくてゆるゆる状態でしたので、ネックのジョイント部にスコッチテープを貼ってちょうどいい感じになりました。
またレバーがネックのオクターブキーの接点から離れてしまってネックオクターブキーが十分なストロークで動かなかったので、ネックの接点側にコルクを両面テープで貼ってレバーと接点との間を埋めました。因みにコルクですが、サックスのキー調整用に使ったりする場合でもわずかな量で済みますので、ワインなどのコルクで十分です。ワインを飲んだら捨てないでとっておきましょう。
いよいよ試奏!
左がリファレンス54ネック装着のMTS-700
右がアメセルMarkVIシリアル8万番
ネックを変えただけなのになんとなく全体的
に雰囲気が似てきた?(笑)
普段使っている、オットーリンクフロリダモデルにリコージャズセレクトを使って試奏開始です。
最初の印象ですが、このサックスは驚くほどパワフルになりました。楽器全体がびんびん振動します。そしてブローはMarkVIと同じような感覚を覚えました。これならMarkVIの代わりとして使えそうです。実際に音を聞いてみてください。因みにMTS-700のネックをつけた場合はかなりストレスがあります。途中からフレーズにやる気がなくなっている(笑)のがお分かりになるかと思います。もちろんMTS-700のネックは作りそのものが元々良いと言うわけではないかも知れません。
今回の結果から、中国製MTS-700+リファレンス54ネック+調整費用ということですべて新規に購入しても国産の十数万円クラスの予算でかなりいい結果が得られることがわかりました。またおそらく本物のシリーズ2にリファレンス54ネックを装着すればさらに良い結果が期待できると思います。(いずれ確認したいと思います。)
リファレンス54ネック+MTS−700本体(MP3)
アメセルMarkVI シリアル8万(MP3)
MTS−700ネック+MTS−700本体(MP3)
サックスプレーヤーがネックを交換することはしばしばありますが通常はゴールドプレートやシルバープレートなど表面処理状態の変化のみが多いと思います。今回のようにネックシェイプそのものが違う場合はかなり楽器そのもののキャラクターが変わります。これは試す価値があると思います。(ただし、セルマーまたはセルマーのコピーモデル以外のサックスの場合はこのネックは装着出来ないかも知れません)
注意事項:今回の記事はすべて当サイトでの独自の企画であり、Selmer、Mavisなどのメーカー、ブランド、販売店には一切関係がありません。またこの記事をアップする上での楽器メーカー、販売店などのスポンサーなども一切ありません。同時にこの記事で語られている楽器およびパーツについてはすべて当サイトでの独自の評価であり、考え方であるので楽器メーカーや販売店での一般的な説明と異なってる場合があるかも知れません。また当サイトの記事を参考にして楽器、パーツまたは付属品などを選択し購入し、或いは改造等をした結果に対しては当サイトはいかなる責任もありません。あくまで個人の判断/責任のもとで行ってください。
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