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挑戦!アメセル音追求!続中国製サックス改造 
byアローン

 前回の中国製サックスの記事の後、反響がありましたが、その後さらに楽器を本格的に改造して、最終的にかなり良い結果もえられたので、今回は中国製とアメセル(アメリカンセルマー)というこの両極端なサックスについてサックスのカスタマイズというまだ日本ではおそらく少数派の世界(ギターなどと比べると)を通し説明、思うところを述べたいと思います。もちろん、音源もアップしています。

中国製廉価サックスの「まとも化」計画

 前回、リファレンス54のネック装着と簡単な再調整でそこそこマーク6に近づいたような音がでましたが、そもそもこの中国製廉価サックスMTS-700はサックスとしての問題が多くあり、まずはそれをまともにしましょうと言うところの開始です。それで次の様にすることにしました。

1.タンポ全取替え

どうもタンポがよくないので、米国製のタンポに交換する。特に小さいタンポにはリゾネーターがないといういい加減なところがあるので、これは真っ先に交換することにしました。(中国製テナーのパワーが出ない理由はこれです)


2.トーンホールのファイリング(仕上げ)
 トーンホールもタンポと接触するところが綺麗なフラット状態でないといけないのと、厚みがありすぎるとタンポへの食いつきが悪くなります。そこでトーンホールの内径の仕上げ加工も行いました。

3.再調整
 今回、タンポ交換もありますのでそれらを含めてまずはリペアレベルの再調整をする。

4.Bisキー位置変更
 Bisキーの位置がBから離れているんですね(こういうところが中国製の弱いところ)。これだと演奏しにくいので変更しました。


上の1と3だけやった結果をまず聞いてください。

これだけでもずいぶん使える楽器になったと思います。特に調整による音抜けの違いは大きく変わります。この時点で正直言って、自分が過去に吹いた本物のリファレンス54と音的にはそれほど差がないという印象を受けました。

アメセルへの挑戦

 さて、そもそもこの楽器の改造を始めた理由は自分が普段つかってるアメセルM6の代わりができるスペアテナーを求めてだったのです、もちろん、それだったらアメセルをもう一本買えばいいわけですが、それならいい音が出て当たり前です。しかしたまにしか使わないのに2本目のアメセルはもったいないし、いい音出て当たり前というのもつまらないので今回のように自分でなんとかするという手段を選びました。もちろん現行モデルもいろいろ吹いてはみましたがアメセルと比べてしまうとガクっと来てしまうものばかりでした。もちろんネックを変えた中国製ですがアメセルと比べるとやはりそれにはまだまだ遠いとういう状況です。そこでこんどは次のようなことをやりました。

5.ラッカー自然乾燥化
6.2番管とU字間の間のソルダーリング(半田付け)
7.特殊調整
8.特殊加工1
9.特殊加工2
10.HighF#キー廃止


 ここから少し歯切れの悪い説明が出てきて大変申し訳ないのですが、5と6はすでにWeb上でも話題とされ、アメセルとフラセルの違いの代名詞のようになっています。ですからなんの問題もなく説明できます。7〜9に関しては私自身が今回発見したことなどもあり、そういった内容をWebで簡単に説明しない方がいいだろうという判断で今回その詳しい内容はご勘弁いただくことにしました。この点はご了承ください。

ラッカーの自然乾燥

ラッカーの自然乾燥といっても実際、ネックはアンティークサテン仕上げなので本体もそれにあわせてサテン仕上げにしようとしたのですが、焼付けラッカーをはがして、紙やすりを使ってサテン仕上げにしてみたのですが、その結果は「光過ぎる」ということで昔のセルマーのサテンモデルのような感じになってしまいました。そこで、その上に艶消しラッカーをかけたわけですが、少しゴールドなども追加したり、艶消し度も変えたりといろいろやった結果、なんとかネックと違和感がない色に仕上げられました。結果サテン仕上げですがアメセル特有のラッカー自然乾燥になったわけです。

2番管とU字間の間のソルダーリング(半田付け)

 次にU字管の半田付けですが、これは以外に簡単にできました。ご存知のよう多くのサックスはリファレンス54、36やフラセルMARKVIも含めこれの半田付けはやっていません。もちろん意気漏れ対策と強度アップのために接着剤を使って封ししていることは良く知られています。しかし私が思うのはアメセルがここにあえて半田付けを施しているのは「2番管とU字管の振動モードの一体化である」と考えています。なんか難しい言い方をしてしまいましたが要するにハンダという金属で接合させることによって、振動を2番管からU字管、U字管から2番管にうまく伝えるということではないかと考えています。

特殊調整

 この言葉も良く使われていますがその実態は何が特殊なのか良くわからないですね。ここから話が歯切れが悪くなっていくのですが、基本的には音抜けを極限までよくする調整だと私は解釈しています。この調整をするととにかく抜けが良くなりますが、実は通常の楽器やフラセルM6などもここまで調整できるようになっていないし、当然アメセル以外のサックスではやられていないし、想定もされていないわけです。この中国製サックスでもそれは言えることですが、私はあえてそれが出きるように楽器のキーメカニズムの可動範囲を極限まで変えました。他のアメセル以外の楽器でも無理すればできるものはあると思いますが、決しいてリペアマンはその領域まで調整することはないと思います。それは楽器自身が設定しているニュートラル位置からあまりにもずれるからです。ところがアメセルではそこがニュートラル位置なのです。

特殊加工1
 
 これについては、実はあるWebからの情報で知りました。アメセルだけが行っているところです。これは上の特殊調整の合わせ技でやはり音抜けを良くするわけです。

特殊加工2

 これは自分で発見さしたのですがやはり音抜けを良くするためにアメセルだけが採用しています。

HighF#キー廃止

 最後にアメセルMARK6ではHighF#キーなしが多く、現在のジャズテナーではフラジオで出すのが一般的であり、無用の長物です。そればかりは楽器の重量を増やしてしまっている面もあり、使わないならないほうがよほどいいと考えてホールを真鍮で塞いで、関連のキーやポストを全部外しました。音に対する影響もあります。

アメセルVSフラセル

 以上の結果からMarkVIにしてもフラセルとアメセルの違いは想像以上の物があることがわかります。一般に同じパーツを使っていると言われていわれてますが、そもそも真鋳の部品です。簡単に曲げたり加工したりできる金属ですから、組み立て時にどうするかによってぜんぜん別物になってもなんの不思議もありません。そしておそらく現在のアメセルMarkVI、SBA人気がそういった技術的根拠がもたらしているということをフランスセルマー社は良く知らず、残念ながらリファレンスシリーズでもそれらを全く考慮していないようです。

試聴コーナー

1.ラッカー自然乾燥化、2番管とU字管の間のソルダーリング(半田付け)、特殊調整、特殊加工1、特殊加工2、HighF#キー廃止

2.アメセルMarkVI


 結果として、目をつぶって吹いてるとアメセルMarkVIを吹いているような錯覚すらあります。アメセルMarkVIを普段から吹いている人にとっては全く違和感のない吹奏感をもつことは間違いないと思います。因みに何が効いたかというと、正直言って今回の実験ではラッカーの自然乾燥はそれほど大きな変化があったという印象はありません。特殊調整、特殊加工は抜けが全く変わってしまい、これは驚きです。半田付けは、抜けるようになって倍音が大きく出るようになった結果、そのために音像がややぼやけてしまいそうになるのですがそれををどっしいりと低い方に安定させる効果があります。これによりアメセル特有の音のプロジェクション(輪郭)がはっきりします。
 少し理論的な説明をしますが、抜けが良くなって倍音が出るようになった理由は共鳴体としての効率が上がったためでしょう。そしてハンダ付けは2番管とU次管がが一体になり、ここで固有振動数を下げているのではないかと想像します。そして倍音のおいしいところだけを残すという効果があるのではないかと想像しています。



番外偏

ストラップフックの位置変更  ラッカーは剥がし作業中 道具,素材  
   


アルト用に確保した台湾製MarkVIコピーモデル(リファレンスアルトのネックが手に入ったらやってみようかと考えています。)右側が本物のアメセルM6
 


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