あのプレーをやってみたい(1)ピアノのブロックコード
(ホーンアレンジにも応用できます。)

  ピアニストのソロを聞いているとソロの終わりの方で良くコードだけでアドリブのラインを作ってるのを聞きますが、盛り上がるし、カッコいいんなあと思ったりしませんか。またピアノトリオなどはテーマでやはりメロディーラインのハーモニーをつけてこれまたピアノトリオの醍醐味を感じさせます。このようなプレーをブロックコードと言います。
 そこで今回はこのブロックコードの弾き方についてわかりやすい例をとり、また応用範囲の広い使い方や理屈を特集いたします。

 まずは、このブロックコードを使ったテーマのex1を聞いてみてください。これは有名なボサノバの曲ですがこういう風にするとコードバッキングがなくとも気持ち良く聞こえます。まさにピアノトリオでやりたくなるような演奏ですね。

ex1演奏を聞いてみる



2つのコードだけで

 さて、まずはこのようにメロディーラインにくっつけるブロックコードはどういう理屈になっているのでしょうか。この例では4声のクローズドハーモニーという手法を使っています。そこで4声のクローズドハーモニーが簡単にできる方法をex2にに示します。これはCメジャースケールの音階をブロックコード化しています。実はex2はC6というコードを転回させてC、G、E、Aの音をトップノートにして、ド、ソ、ミ、ラに対応させています。それでは残りのレ、ファ、シはどうするかとといいますと、ここにはG7♭9(Gハーフディミニュッシュ)を使います。G7♭9の構成音はG、B、D、F、A♭ですが(コードのルートは省略します。)転回すればトップノートにレ、ファ、シをもってくることが出来るという仕掛けになっています。
 それで結局、C6とG7♭9という2つのコードでCメジャースケールのメロディーラインをつくることが出来るようになります。またex2においてはG#というパッシングディミシュッシュドから発生する音を音階の中に入れています。

ex2演奏を聞いてみる


豆知識:B、D、F、A♭はそれぞれディミニュッシュドのインターバルですので、このコードがラインの中に入る理屈としてはパッシングディミニュッシュとして機能すると考えられますし、またG7であればドミナントですからこれはC6に解決するという機能もあるとも言えます。

マイナースケールの場合

次にマイナースケールの例としてex3を見てください。これはメジャーのときと同じ原理でCm7とG7♭9を転回させて各音階をトップノートにしているわけです。ex1のC−のところはこれの応用です。

ex3演奏を聞いてみる

さて、これですべてのキーすなわちC6〜B6、C−7〜B−7でex2やex3のようなブロックコードを覚えておけばいつでもアドリブの中にブロックコードの演奏ができるようになります。またインスタントにテーマなどをホーンアレンジして3管、4管で演奏するときにも同じ理屈です。


アドリブの例

ex4におなじみの2-5-1進行に簡単なアドリブラインをつけた譜例を示します。この例ですとなんともつまらない単純なラインですが、これにex2にあるブロックコードをつけてやるとex5のようになります。これだとずいぶん印象が違います。なんとなくそれらしい感じがすると思います。また、ex6ではDm7のところはDm7コードの転回にした例です。このような手法も使えます。
ex4演奏を聞いてみる

ex5演奏を聞いてみる

ex6演奏を聞いてみる


豆知識:ex5は2−5−1のキーがCだったので、C6のブロックコードを使いました。ex6の場合はDm7のコードのところをマイナーキーと考えて、Dm7のブロックコードを使いました。

フィードバックによる追加

  ピアニストさんから実際にはトップノートのオクターブ下に同じラインを入れて使うのが一般的なブロックコードであるという指摘を頂ました(ジョージシアリングで有名)。この例はex7に示します。この場合、右手でトップノートとその下につけた和音、左手でボトムのラインを弾くことになります。また、オクターブのダブリングの間に和音を入れた場合のみを「ブロックコード」と定義しているとのご指摘もありました。またブロック・コード奏法だといっても全てをブロック・コードで弾いていないということです。オクターブのみも織りまぜて弾いていることもあるということです。 一方では有名なジャズピアノの教則本(Mark Levine著、JazzPiano book)にはex5、ex6のようなトップノートのみの場合も含めてブロックコードとして扱っています。またクローズドボイシングでなくともオープンボイシング(ギターなどの場合)の場合もあるという意見もいただいております。いろいろなご意見をいただきましてありがとうございました。

ex7演奏を聞いてみる

他にもブロックコードの作り方はいろいろありますがまた折を見て紹介していきたいと思います。



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